【校長講話】 6月30日(金)
中体連下伊那地区大会の皆さんの活躍、粘り強さを、私はこの目ではっきり見させてもらいました。また、清掃にしっかり取り組んでいる皆さん、ノート整理をきちんと進める皆さん、放課後学習に熱心に取り組む皆さん、歩いて元気よく登校する皆さんなど、日常生活で輝く姿を沢山見ることができ、うれしく思っています。
6月17日(土)に飯田市の小中学校に関係する皆さんが集まって、飯田コミュニティスクール設立記念大会が行われました。コミュニティスクールとは、地域の方に協力いただいて、学校をさらによくしていこうという取組です。市内でその先頭に立っているのが丸山小・西中で、その取組の様子も紹介されました。皆さんが小学校校門で行う挨拶活動や大平クリーンキャンペーン、羽場地区市政懇談会での意見発表も、そうした活動の1つです。
そして、この大会の中で、牧野飯田市長さんがとても大事な話をされました。それは、学校や地域は、identity(アイデンティテイー)を育ててきたかという内容でした。identity(アイデンティテイー)とは、国や民族・組織などの、ある特定集団への帰属意識という意味です。学校で言えば、1年1組は自分の生活や学習の場になっているか、安心できる場か、好きで誇りが持てる場か、サッカー部は、西中はと置き換えたらどうでしょうか。さらに、羽場地区は、丸山地区は、飯田市はそうした場になっているかを問うお話でした。
市長さんは、ご自分の経験を挙げ、ふるさとに誇りをもつことの大切さについて話されました。自分が東京に出たとき、周りの人にどんなふるさとなのか問われたとき、「何もないところだ」と答えたそうです。自分のふるさとを田舎だからと恥ずかしく思ったり、自分の地域のよさを見いだせなかったりした自分がいたようです。
実は私も、同じ思いをしたことがあります。今なら阿智村に住んでいます。家は農家ですと平気で言えますが、村という言い方が恥ずかしかったり、農業で育ててもらったことを言えなかったりしたのです。市長さんの話で、そのことを鮮明に思い出しました。田舎が恥ずかしいと思う自分がいました。ふるさとにidentity(アイデンティテイー)が持てていなかったのです。
市長さんはさらに続けます。その後、縁があって飯田市にもどり、市長になります。その中で、豊かな自然や文化、水引などの伝統産業、自治を守る公民館活動等、子どもの頃には気づけなかった飯田市の良さを沢山知ります。もし子どもの頃に経験し、知っていれば、東京に出たとき「何もないところだ」とは言わなかったというのです。小・中・高校時代に地域のよさをいっぱい経験してほしい。そのことが飯田市には必要だと考えて取り組んできたそうです。
一端飯田市を離れた皆さんが、また飯田市に戻ろうと思うのは、飯田市へのidentity(アイデンティテイー)があるからだというのです。また、学校生活を終えて引き続きこの地に残ろうと思うのも飯田市へのidentity(アイデンティテイー)があるからだというのです。そんな願いをもって市長をされてきたことがわかりました。
以前は6割の人が飯田の地を離れて戻って来なかったのが、ふるさとを大事にする学習を初めて、今では6割の人が飯田市に戻ってきたり、はじめから暮らすようになったと話されました。
そこでこの夏、本校が大事にしているキャリア教育、職場体験学習を通して、皆さんのidentity(アイデンティテイー)を探してほしいのです。そのポイントは、体験学習を行う会社の経営理念や社訓、事業所や商店・農家などで大事にされていることを、しっかり聞き取り、その目的や考えを達成するために取り組んでほしいということです。どんな願いを持って会社を経営しているのか、社員はどんな目標をもって働いているのか考えてみてください。この会社で働く意味、しいては飯田市で生きる意味が見えてくるかもしりません。
そして、私がとても気になっている会社があるので紹介します。ANA、All Nippon Airways、全日本空輸株式会社です。日本を代表する航空会社です。
書店に置かれたANAと書かれた本との出会いがありました。表紙に「あんしん、あったか、あかるく元気!なANAの舞台裏に迫る」とい文字が飛び込んできました。手にとってパラパラと見てみると、会社の目標なんだということがわかりました。本校で言えば「自主 敬愛 誠実」、生徒会目標で言えば「百花繚乱」ですか。日本を代表する航空会社が「あんしん、あったか、あかるく元気!」です。正直小学校低学年の目標みたいだと思いました。そして、「舞台裏を覗けば、もっと好きになる!」と書かてあったので、ついつい購入してしまいました。
書かれていたことは、大体次のようなことです。
2004年に、自分の会社らしさを考えるプロジェクトを立ち上げる中で、お客様を太陽になぞらえて、会社も社員もお客様の方を向いている会社でありたいと願い、「あんしん、あったか、あかるく元気!」を目標にしたそうです。
社員は35,000人、その内パイロットは2,800人。193路線に就航し、1年間に5,000万人が利用する。2013年からイギリスの格付け会社から、世界最高評価の5つ星を与えられています。
35,000人の社員は、自分の会社を次のように言います。「人と仲間に、優しい人情派」「チームワークがよい」「チャレンジ精神がある」「大変な時こそ、力を合わせる」「風通しがよい」「熱い人が多い」。
皆さんは西中や飯田市をどう表現しますか。
さらに読み進めると、「お客様視点」が大事であると書かれていました。皆さんはどう考えますか。直接接待するお客様、商品やサービスの先に見えるお客様に、どうしたら満足してもらえるでしょうか。自分がサービスを受ける側として、どうサービスを提供してほしいか、考えながら職場体験学習に取り組んでください。
そんな取組の中で、牧野市長が言われた飯田市のidentity(アイデンティテイー)が見えてくるかもしれません。
平成29年6月29日 飯田市立飯田西中学校長 原 勝人